Hibon-naru Mono - T Newfields no E to Shi

秋の深まりを感じさせる喫茶店の片隅で、テーブルを囲む四人のあいだに小さな沈黙が流れていた。中央に置かれた原稿用紙には、一編の詩が静かに横たわっている。

「この詩の基本的な前提、間違ってると思うな」

玲亜がゆっくりと首を横に振った。カップから立ち上る湯気の向こうで、彼女の澄んだ瞳がまっすぐに原稿を見つめている。

「だって私、精神的にどこも破綻していないような、ごく健康的で才能あふれる人を何人も知っているもの」

その言葉を引き取るように、向かいに座っていたミンがふっと口元を緩めた。手元のスプーンで静かに紅茶をかき混ぜながら、彼女は軽やかな声で付け加える。

「それにね、大して才能もないのに、すっかり生きこじれている人だって山ほど知っているわ」

二人のやり取りを微笑ましそうに眺めていたティンが、身を乗り出すようにして会話に割って入った。組んだ指の上に顎を乗せ、思索を深めるように言葉を紡ぐ。

「思うんだけど、いわゆる『普通』に見える人たちだって、みんなどこかしら歪んでいて、同時にどこかしら上手くやって留まっているんじゃないかな。誰もが完璧な機能不全でもなければ、完全な健全でもないというか……」

四人の意見が出揃うのを待っていたかのように、悟が小さく肩をすくめた。肘掛けに背を預け、冷めかけたコーヒーに目を落としながら、静かな口調で呟く。

「そうですね……『正気』や『正常』、あるいは『才能』なんて言葉の本当の意味について、僕たちはもう少し慎重に考えてみる価値がありそうです」

窓の外では落葉が風に舞い、四人のテーブルには、いま提示された問いの余韻が心地よい重みとなって漂っていた。